《世界のキーパーソン》ヴァンサン・ボロレ(仏投資グループ会長)
極右を大統領候補にした「大富豪」
2021年11月号
来年四月に迫ったフランスの大統領選に、変わり種が挑む。
六十三歳のエリック・ゼムールは、未成年の移民たちについて「連中は泥棒で、殺人鬼で、レイプ魔だ。彼らを即刻、母国に送り返せ」とテレビ番組で繰り返し、たちまち人気者になった。世論調査では十数パーセントの支持を集め、極右「国民連合」のマリーヌ・ルペン党首の支持層を大きく切り崩した。大きな額と目が印象的な、アルジェリア系ユダヤ人である。
こんな風変わりな人物を、有力候補にのし上げたのは、フランスの二十四時間ニュース専門局「Cニュース」だ。その経営者が、今回紹介するボロレである。投資グループ「ボロレ」の総帥だ。
ボロレ家の事業は、十九世紀に遡る。ブルターニュ地方で興した製紙会社が出発点だ。動乱と戦争で揺れた二世紀の間、事業は徐々に拡大した。本社は今もブルターニュにある。第二次世界大戦中には、レジスタンス戦士や戦闘機乗りなど多彩な英雄を輩出した。
当代のボロレは元来、乗っ取り屋である。大手建設会社、ビデオゲーム、広告やテレコム、メディアと、様々な事業に手を出して、その都度騒がれた。イタリアの事・・・
六十三歳のエリック・ゼムールは、未成年の移民たちについて「連中は泥棒で、殺人鬼で、レイプ魔だ。彼らを即刻、母国に送り返せ」とテレビ番組で繰り返し、たちまち人気者になった。世論調査では十数パーセントの支持を集め、極右「国民連合」のマリーヌ・ルペン党首の支持層を大きく切り崩した。大きな額と目が印象的な、アルジェリア系ユダヤ人である。
こんな風変わりな人物を、有力候補にのし上げたのは、フランスの二十四時間ニュース専門局「Cニュース」だ。その経営者が、今回紹介するボロレである。投資グループ「ボロレ」の総帥だ。
ボロレ家の事業は、十九世紀に遡る。ブルターニュ地方で興した製紙会社が出発点だ。動乱と戦争で揺れた二世紀の間、事業は徐々に拡大した。本社は今もブルターニュにある。第二次世界大戦中には、レジスタンス戦士や戦闘機乗りなど多彩な英雄を輩出した。
当代のボロレは元来、乗っ取り屋である。大手建設会社、ビデオゲーム、広告やテレコム、メディアと、様々な事業に手を出して、その都度騒がれた。イタリアの事・・・