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社会・文化

クラシック界を支える「鈴木ファミリー」

コロナ時代の新たな牽引役

2021年11月号


 日本のクラシック音楽ファンの多くが新型コロナ騒動を身近に感じた最初は、「鈴木雅明率いるバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)が欧州楽旅の最中に立ち往生」というニュースだった。
 バッハやヘンデル演奏解釈の世界的権威の指揮者鈴木雅明が、一九九〇年に組織した古い時代の作品再現を専門とする楽団BCJを率いる欧州演奏旅行は、復活祭頃の恒例となっていた。二〇二〇年も、鍵盤楽器担当の息子優人を伴い三月に渡欧。十一都市でバッハの《ヨハネ受難曲》を演奏する予定が立てられた。
 楽団の渡欧直後に、新型コロナウイルスの急速な蔓延でEU内国境封鎖が始まる。移動もままならなくなったBCJは、最初の三公演を終え到着したケルンで立ち往生。三月十五日には、公演が予定されていたケルン大聖堂下のフィルハーモニーホールから世界に向けた無観客演奏のインターネット配信が急遽決定。コロナ禍で大流行となる「ネットでのストリーミング」の嚆矢のひとつとなった。
 同時に行われたCD録音セッションの間にも状況は更に悪化、警察がホール閉鎖と即時退去を求めてくる。鈴木雅明によれば、BCJの演奏を・・・