三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

連載

西風 486

安全対策を競う「私鉄王国」

2021年11月号

 鉄道の乗客の安全を確保するために設置される「ホームドア」。安全柵とのセットで、線路への転落などを防ぐが、国内でのルーツは関西にある。日本で初めて設置されたのは、一九七〇年に大阪で開催された万国博覧会の会場内輸送を担ったモノレールだった。
 常設路線では、東海道新幹線の熱海駅に七四年に設置されたものが最初とされる。同駅は地形的に狭く、通過する「ひかり」が、通常のホーム横を走っていたという特殊な事情があった。
 ただ、初めて全線にわたってホームドアが設置されたのは、八一年に開業した神戸市のポートライナーだ。無人運行をするための安全対策だが、胸くらいの高さの柵ではなく、ホームの屋根まで完全に覆う「フルスクリーン」と呼ばれるタイプを早くも導入した。
 阪神電鉄の大阪梅田駅では、十月三十日から、長らく工事をしていた「新一番線ホーム」の使用を開始した。これは、従来の一番線降車ホームの北側に、新たなプラットホームを拡張していたもの。
 従来の線路を大きく北側に迂回させて、ホームのスペースを確保したのだ。
 今後は、他の線路についても、段階的に移動さ・・・