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米国を覆う労働争議と「大退職」

成長回復に向けた「良い兆候」

2021年11月号

 米国が、労働争議で揺れている。ストライキの波は、医療従事者や工場労働者、映画スタジオの従業員まで、あらゆる業界に及び、十月にはついに「ストライクトーバー(ストの十月)」という造語まで生まれた。新型コロナウイルス感染拡大の中で、過酷な体験をした労働者たちが、「労働者にもっと敬意を払って欲しい」と、賃金だけでなく全般的な待遇改善を求めているのが特徴だ。
 低賃金職場などから退職希望者が相次ぐ「大退職(グレート・レジグネーション)」と呼ばれる現象も起きている。景気回復期に入った米国で始まった、近年にない労働市場の大変化について、「これはとても良い兆候だ」と見る経済専門家が増えている。
 コロナ禍の下、病院でストライキ―。こんな悪夢のような出来事が、現実に迫った。
 医療・保険の最大手「カイザーパーマネンテ(KP)」で、カリフォルニア州とオレゴン州の医療従事者らが十月、九六%の賛成で「ストライキ決行」を承認し、経営陣との交渉に入った。看護師や病院職員からは「コロナ禍前から人手不足だった」「全員が限界を超えて頑張ったのに、経営側は全く評価していない」など、経営陣を・・・