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連載

《世界のキーパーソン》胡錫進(中国「環球時報」編集長)

習近平の忠実なる「宣伝マン」

2021年10月号

 中国で習近平国家主席の下、文化・芸術分野の粛清が始まった。八月以降、「親日」とされた女優のヴィッキー・チャオ(趙薇)がウェブ上で次々と名前を削除され、人気女優ジェン・シュアン(鄭爽)は、脱税により円換算で約五十一億円の罰金を科された。
 言論・学術分野では、習体制に少しでも懐疑的と見られる論文や著者がやり玉に挙がる。「整頓」運動の先頭に立つのが、「環球時報(グローバル・タイムズ)」である。今年六十一歳の胡錫進は二〇〇五年から、編集長を務めている。
 環球時報と言えば、日本にかみつくことでご存じの読者も多いだろう。最近もアイドルグループ「乃木坂46」を、明治の陸軍大将、乃木希典と結び付けて、見当違いの非難を浴びせた。反米、反日の辛辣な批判やデマ評論だけでなく、習主席の意向に沿って内政外交の攻撃的な論調を展開する。
 胡は一九六〇年、北京に生まれた。人民解放軍の国防科学技術大学で学んだ後、北京外国語大学でロシア語を専攻した。八九年、民主化を求める若者が天安門広場で連日、抗議活動を行うと、胡もこれに加わった。本人は「六月四日(天安門事件)前に抗議から離脱した」・・・