皇室の風 第158話
小さな田んぼ
岩井 克己
2021年10月号
悠仁親王が九月六日に十五歳になった。身長も母親や姉たちにほぼ並び、間もなく追い越しそうだ。小泉純一郎内閣で皇室典範改正論議が紛糾するなか誕生した頃が思い出され、子供の成長は本当に早いと思う。
コロナ禍の時世に配慮してか、宮内庁が誕生日用として発表した動画は、屋内で本を前に父の秋篠宮と語り合う静かな姿だった。
秋篠宮が本を開いて悠仁親王に見せ語らっていたが、ふと中座して二冊目を持参。付箋のついたページを見せながら説明している。父子ともに楽しげで、とりわけ秋篠宮は近年あまり見せなかった明るい父親の笑顔である。
宮内庁が流す動画は音声なしのため、何を話しているかはわからない。しかし、あまり楽しげなので「何の本かしら」と録画を再生してみた。
一冊目は背表紙の字から、作物学者渡部忠世ら編集の論文集『稲のアジア史 第一巻 アジア稲作文化の生態基盤』(一九八七年刊)の普及版だとわかる。民俗学者柳田國男、農学者安藤廣太郎を中心とした学際的論文集『稲の日本史』(六九年刊)の問題意識を継承し、視野をアジアに広げて日本の稲作文化を多角的に考究した三巻シリーズ・・・
コロナ禍の時世に配慮してか、宮内庁が誕生日用として発表した動画は、屋内で本を前に父の秋篠宮と語り合う静かな姿だった。
秋篠宮が本を開いて悠仁親王に見せ語らっていたが、ふと中座して二冊目を持参。付箋のついたページを見せながら説明している。父子ともに楽しげで、とりわけ秋篠宮は近年あまり見せなかった明るい父親の笑顔である。
宮内庁が流す動画は音声なしのため、何を話しているかはわからない。しかし、あまり楽しげなので「何の本かしら」と録画を再生してみた。
一冊目は背表紙の字から、作物学者渡部忠世ら編集の論文集『稲のアジア史 第一巻 アジア稲作文化の生態基盤』(一九八七年刊)の普及版だとわかる。民俗学者柳田國男、農学者安藤廣太郎を中心とした学際的論文集『稲の日本史』(六九年刊)の問題意識を継承し、視野をアジアに広げて日本の稲作文化を多角的に考究した三巻シリーズ・・・