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政治

総裁選で見えた安倍晋三の「落日」

《政界スキャン》

2021年10月号

 トップを退いた者に相応の立ち居振る舞いが求められるのは、どの世界も変わらない。元社長がいつまでも社長人事に口出ししたら経営はおかしくなる。自民党史では田中角栄、竹下登両元首相らが退陣後も首相の人選に影響力を及ぼしたが、それでも「闇将軍」「キングメーカー」として陰に隠れながらの采配だった。
 その点、今度の総裁選における安倍晋三前首相の開けっ広げな入れ込み方は尋常でない。国会議員一人一人はもちろん、地方議員や支持団体幹部にまで自ら連日電話をかけまくり、高市早苗前総務相への支持を頼む様子は、まるで一運動員さながらだった。
「やあ、久しぶり。元気? 岸田(文雄元政調会長)さんとこにいるんだって? こっち来てよ」
 細田派の若手議員が受けた電話は友達口調だった。様子見だった安倍内閣の元閣僚も政治論抜きの見てくれで勧誘された。
「四人の候補で一番話がうまいのは高市さんだと思わない?」
 適当に相づちを打ったら即日、記者からの問い合わせで高市選対に名前が入っていると知らされたという。抜けるわけにもいかず、黙って他の候補に入れた。
 草の・・・