中国「TPP加盟申請」の狡猾
国内外の苦境を隠す「奇襲」
2021年10月号
中国は九月十六日、環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟を正式申請した。昨年十一月に習近平国家主席が加盟の意思を表明していたとはいえ、前触れもない突然の申請に日本はじめ加盟国は虚を突かれた。高い関税撤廃率、国有企業支援の制限など中国にとってTPP加盟のハードルはきわめて高く、実現には疑問符がつくが、「申請だけでも十分な意味を持つ巧妙な布石」と中国専門家は指摘する。TPP十一カ国の間に疑心暗鬼のさざ波を立て、中国自身は巨大経済圏への参加可能性で新たな成長シナリオを示し、直面する経済の急減速や不動産業界発の金融リスクを最小限に食い止めることができるからだ。
中国のTPP加盟申請は、米国はもちろん、加盟国である日本、豪州すら予想もしないタイミングで、しかも常套手段の中国側の先行発表ではなく、TPP事務局を担うニュージーランドの貿易担当相への正式提出で公表された。孫子の兵法に言う「奇襲は陽門(正門)より」である。
なぜ、このタイミングだったのか。習政権を動かしたのは、中国経済の想定以上の急減速、金融混乱のリスクである。中国の八月の景気指標は決して悪くはなかった。輸出は・・・
中国のTPP加盟申請は、米国はもちろん、加盟国である日本、豪州すら予想もしないタイミングで、しかも常套手段の中国側の先行発表ではなく、TPP事務局を担うニュージーランドの貿易担当相への正式提出で公表された。孫子の兵法に言う「奇襲は陽門(正門)より」である。
なぜ、このタイミングだったのか。習政権を動かしたのは、中国経済の想定以上の急減速、金融混乱のリスクである。中国の八月の景気指標は決して悪くはなかった。輸出は・・・