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政治

菅義偉の「死の行軍」

自公「過半数割れ」への一本道

2021年9月号

 自民党幹事長の二階俊博はスイッチが入ると、顔を小刻みに振りながら鋭い言葉を短く発する。八月二十四日午前、自民党本部での定例記者会見に臨んだ二階はまさにスイッチが入っていた。まず二階に対して飛んだ質問は「菅総理を支持する考えに変わりはないか」―。これに対して二階は「変わりはありません」と穏やかに応じたが次の質問で態度は一変した。
「二階派としても菅首相を支持するのか」
「当然のことじゃありませんか。愚問だよ」
 一瞬にして記者会見場は二階の圧倒的な迫力に支配された。ただし、二階の表情からは明らかにその場を楽しんでいる様子が伝わってきた。二日前の二十二日に行われた横浜市長選での歴史的な大惨敗で、政治的窮地に立つ首相菅義偉に助け舟を出す、またとないチャンスとなったからだ。
 横浜市長選には菅と実の兄弟のように政治家の道を歩んできた前国家公安委員長の小此木八郎が立候補。選挙前は小此木の楽勝と見られていたが、終わってみればほぼ無名に近かった元横浜市立大医学部教授の山中竹春に大惨敗した。それもマスコミ用語の「ゼロ当確」。事前の情勢調査や取材、当日に投・・・