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経済

膨張する日本の「役員報酬」

正当性なき「一億円超」が増殖中

2021年9月号

 コロナ禍の長期化で飲食業、宿泊業はもちろん幅広い中小企業が破綻の瀬戸際に立つ中、大手企業の役員報酬の膨張が続いている。業績回復や株価上昇を反映した面もあるが、雇用者全体の収入が落ち込み、失業も増加する状況では国民の違和感、不信感は強い。二〇二一年三月期は報酬を開示した上場企業のみでも一億円超を得た役員が五百四十四人と前年比十一人増。外国人役員の高額報酬は別の議論として、次から次へと製品検査不正が暴露される三菱電機が一九年三月期まで五年連続で毎期二十人以上に一億円超の報酬を出していたことをみれば、役員報酬増のいかがわしさがわかる。
 日本のサラリーマンの給与が主要七カ国(G7)で最低であることは、最近になってようやく国民に広く認識され始めた。経済協力開発機構(OECD)加盟国で比較すれば、日本の平均賃金(二〇二〇年、購買力平価)は米国の五六%、ドイツの七二%、フランスの八五%に過ぎず、韓国、イスラエルを下回る。
 企業が人件費削減で生き延びようとした結果、個人消費は伸びず、デフレが加速するという悪循環が続いている。この数年、最低賃金の引き上げや「同一労働同一賃金」原・・・