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連載

Book Reviewing Globe 448

中国が上塗りする「地図と歴史」

2021年9月号

 中国が現在、抱える深刻な問題の多くが、地図と歴史をめぐって引き起こされている。台湾、尖閣諸島、西沙・南沙諸島、香港、新疆ウイグル、チベット、ヒマラヤ山脈……そこで生起する激しい緊張はいずれも、中国と中国人とその版図の概念に関する中国共産党の主張と教義が、中国そのものの多様な民族構成と多様な過去を圧殺し、漢民族中心の排他的な「一民族支配体制(ethnocracy)」の秩序観と歴史観に基づいているところからくる。
 中国共産党が誇らしげに喧伝する「中国五千年の歴史」、いや、「中国」という概念そのものも実は、西欧列強に蹂躙された十九世紀末から二十世紀初頭の清末から民国にかけて、梁啓超や孫文らの改革派や革命家たちが新たな国づくりのために生み出した発明であった。
 彼らは、西欧と日本に対抗し、中国が生存するため、欧米との“違い”をことさら際立たせる必要を感じた。侵略者としての西欧と犠牲者としての中国という“違い”である。国民が一致団結して、欧米の侵略をはねのけるには国内の“違い&rdqu・・・