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メルケルなきドイツの「混沌」

後継候補に「EU指導者」は務まらず

2021年9月号

 アンゲラ・メルケル首相の後任を決める、ドイツ総選挙(九月二十六日投票)が大荒れの気配である。首相の与党「キリスト教民主同盟(CDU)」の首相候補、アルミン・ラシェット氏が空前の不人気で、すんなり後継に選ばれる情勢ではないからだ。
 連立与党を構成する社会民主党(SPD)も、政権入りを狙う環境政党「緑の党」も突破力不足で、大勝は望めない。ドイツ首相は、欧州連合(EU)の指導者でもあり、ドイツ政治の先行き不安は、国際政治にも影を落としそうだ。
 投票を一カ月あまり先に控えた八月二十日、CDUは姉妹政党「キリスト教社会同盟(CSU)」とともに、オンラインで議員総会を開いた。総選挙に向けた決起集会のはずが、ラシェット氏への批判や注文が相次ぎ、それどころではなくなった。
 中でも厳しかったのが、ラシェット氏と同じノルトライン=ヴェストファーレン州出身のシルビア・パンテル下院議員。会社経営をしながら五人の子供を育てた苦労人で、ふだんは女性問題の専門家として、セックス産業の経営者たちと渡り合っている。
 パンテル議員はラシェット氏の支持率が極端に低いことをあ・・・