パンデミックに抗って実現したとの称賛もあれば、永田町や国際オリンピック委員会（ＩＯＣ）に巣食う「政治屋」の利害で日本人の生命が危機にさらされたとの批判もある。立場によって得たものと失われたものへの評価が異なる二〇二〇東京オリンピック競技大会の一年遅れの開催過程で損なわれた最大の要素は、日本に対する国際社会の好感度だ。
　七月二十三日夜、東京都新宿区の新国立競技場で行われた四時間近くに及ぶ開会式。簡素化が求められていたとはいえ、華やかさを欠くどころか、ウイルスを連想させる衣装や演舞のあざとさで「まるで葬儀のよう」と揶揄された演出には、新型コロナウイルス禍での大会強行を正当化しようとする意図が露骨だった。ＩＯＣと五輪放映を担う米ＮＢＣの意向に逆らえず、子供も出演するイベントが米国時間に合わせて日本の深夜まで続く日程は、「言いなりになる日本」を印象づけもした。
　演出の狙いは「多様性と調和」の強調だとする解説が空々しく響いたのは、大会開催に至る経緯で日本の人権感覚の欠如、多様性に対する無理解が露呈し、これまでにはなかった「日本嫌悪」の感情が広がっていたからだ。「クールジ・・・