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経済

《企業研究》東京メトロ

完全民営化を揺さぶる「小池劇場」

2021年8月号

 悲喜交々―といったところだろう。「悲願」の完全民営化に向けて大きく前進する一方で、発足以来、一貫して慎重な姿勢を示してきた「新線建設」を事実上、呑まされる形となったためだ。
 国土交通省の交通政策審議会が七月十五日、国と東京都で保有する東京地下鉄(東京メトロ)の株式について、それぞれが半分ずつ売却して上場させるべきだとの答申を赤羽一嘉国交相に提出した。これを受けて赤羽国交相は即日、小池百合子都知事とオンラインで会談。売却に向けた準備を進めていくことで合意したという。今後、財務省と都の間で売却時期など具体的な協議が進められる見通しだ。
 と同時に今回の答申に盛り込まれたのが二つの新線建設だ。東京メトロ有楽町線を豊洲駅から延伸して同半蔵門線と都営地下鉄新宿線が乗り入れる住吉駅にまでつなげる路線と、品川駅周辺に新駅をつくって東京メトロ南北線と都営三田線が乗り入れる白金高輪駅とを結ぶ路線で、いずれも都がかねて強く建設を要望していた。答申では早期の新線整備を促し、事業主体については国と都が建設費を補助するとの方向性の下、「東京メトロに役割を求めることが適切だ」との指針を打ち・・・