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中国経済の悪夢「人民元暴落」

V字回復「暗転」の予兆

2021年8月号

 コロナからの経済回復で米欧日などに対し優位に立ったはずの中国を企業業績の悪化、不良債権の膨張、資源価格の急騰、外資の生産拠点の流出など複合リスクが襲っている。だが、習近平政権は金利引き下げを渋り、不動産バブルの封じ込めも手ぬるい。実体経済の悪化、庶民の経済困窮を傍観するかのようだ。習政権を縛っている最大の要因は人民元の暴落懸念。金融緩和であふれたマネーを世界から吸引し、成長を加速させる〝マジック〟を駆使した結果、中国は経済を蝕む人民元高から抜け出すことができないジレンマに陥った。中国の弱みを見抜いた外資が人民元売りの号砲を鳴らす時は近いだろう。

現状を保つ唯一最大の政策

 米中冷戦が後戻りできないほど深刻化し、来年の北京オリンピック(冬季)ボイコット論も米欧で高まるなかでも、米欧の投資家の「中国買い」は続いている。中国国債の外国人保有比率は今年一月末に初めて一〇%を突破、総額で二兆元(約三十四兆円)に達した。五月末にはさらに一千億元増え、増勢に陰りはみえない。外国人の中国株式保有残高も四月に三兆四千億元(約・・・