《横井 玉子》

　東京では三回目の緊急事態宣言が四月二十五日に出されてからというもの、延長に次ぐ延長となっていた。だが六月二十日、ついに解除された。
　振り返ってみれば緊急事態宣言下の自粛要請には、首をかしげたくなるものも多かった。食料品売り場を除いて百貨店は大して混み合わないのに営業自粛に。博物館や美術館、映画館、舞台、コンサートといった催しも人流抑制のためという理由で、軒並み営業が許可されなかった。
　五月十二日に再延長される際には「一部を解除する、美術館は解除の対象だ」との国の方針が報じられた。ところが、東京都からの横やりが入り、十二日以降もなぜか映画館と美術館は引き続き自粛対象となった。その一方で、なぜか舞台は解除されたのである。
　役者が台詞を大声で語る舞台はよくて、なぜ無言でスクリーンに観入る映画館や、会場での私語が憚られる美術館はダメなのか。ともかくも、この東京都の方針によって五月十二日以降も東京国立近代美術館は休館延長となり、三月二十三日から開催されていた「あやしい絵展」はそのまま終了・・・