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連載

本に遇う 第259話

今が五輪の時なのか
河谷 史夫

2021年7月号

「コロナ年表」を作った。
 中国の武漢での「原因不明の肺炎発生」をWHO(世界保健機関)が発表したのは、二〇二〇年一月五日であった。十日後の十五日、日本で最初の新型ウイルス感染者が確認される。それからコロナ、コロナで一年半が過ぎ、今はワクチン、ワクチンのお囃子のなか、この先の見通しがつかない。
 見通しがついているのは菅義偉首相だけで、六月十一日からのサミットに出かけて行き、東京五輪開催の支持を各国首脳から取りつけてきた。開催国がやると言えば、他国がやるなとは言うまいが、よほど確信があるとみえる。頼もしいと思いたいが、そう思えないところがこの人にはつきまとう。
 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会会長の尾身茂が、国会で、東京五輪を「このパンデミック(世界的な感染症大流行)の所でやるのは普通でない」と明言したのは六月三日であった。政府に協力する専門家集団代表の判断を黙殺して国際舞台で見えを切った恰好だ。菅は普通とは思えない。
「花のことは花に問え。紫雲のことは紫雲に問え」と一遍上人は言ったとある。「海のことは漁師に聞け」と浜では言い、「相場は・・・