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経済

日本公庫「赤字一兆円」の野放図

ゾンビ企業融資のツケは国民に

2021年7月号

「財政投融資資金や税金を湯水のごとく注ぎ込み、結局ゾンビ企業や息も絶え絶えの企業を延命させるだけの形で終わるのではないか」。金融界の一部からはこんな懸念の声も飛ぶ。
 一兆三百七十二億円にのぼる巨額最終赤字を計上した日本政策金融公庫の二〇二〇年度決算。損失額は前年度(二百九十六億円)の三十五倍に拡大し、リーマンショック後の〇九年度に計上した一兆一千百二十八億円に次ぐ過去二番目の大きさ。一九年末に七千八百十二億円だった繰越赤字は二兆円に迫る水準にまで膨れ上がった。
「まさに『貸しも貸したり』といったところ」。所管する財務省関係者でさえやや呆れ返る。同公庫が期中に手掛けた融資実行総額は前年度比四・六倍の十七兆九千八百四十一億円に達し、過去最大。貸出金残高はわずか一年間で十二兆二千六百四十七億円も積み上がり、三月末で二十八兆九千四百五十七億円へと膨張した。
 融資増を牽引したのはほかでもない。政府による新型コロナ対策の一環として導入された中小企業向けの制度融資「新型コロナ感染症特別貸付」だ。借り入れから三年間は中小企業基盤整備機構による利子補給で企業にとっては金・・・