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連載

日本の科学アラカルト 130

あらゆる排熱を利用する 熱電素子開発の最前線

2021年6月号

 エネルギー自給率が一〇%程度しかない我が国では、輸入した石油、天然ガス、石炭を燃やして電力を供給している。また、天然ガスや、石油を精製して取り出したガソリンや軽油を使い、各種車両が走る。大量の化石燃料などを消費して生活や経済が支えられているのだが、実はエネルギーを無駄なく使っているわけではない。
 たとえば、自動車が走行した際にはエンジンやその周辺が大変な熱を持つ。これは熱エネルギーそのものだ。放っておけば冷えるが、それは熱エネルギーを空気中に棄てたのと同義だ。
 そうしてみると我々の周囲には「排熱」が溢れている。大規模なプラントなどでは、高温の排熱を回収してエネルギーロスを減らそうとしているが、夏場にエアコンを使う際に、室外機から排出される高温の空気が持つエネルギーを再利用することは、ほぼない。
 たかが排熱といっても、その総エネルギー量は尋常ではない。一般に、一次エネルギーのうち利用できているのは三分の一程度といわれる。つまり、残りの六割以上を排熱として棄てているというから驚かされる。
 前述した通り、プラントなどでは高温の排熱から再びエネ・・・