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政治

ワクチン「自衛隊投入」の危うさ

国家観なき菅政権の「大衆迎合」

2021年6月号

 課題解決を掲げてアドホックに新組織を乱立させるのは、国家観も政治理念も希薄なリーダーが人気取りの思惑で使う常套手段だ。大義名分の「縦割り打破」どころか、細切れで視野の狭い行政を再生産するばかりの政策に時間と労力を費やし、真に必要な組織づくりには背を向ける。その通弊は、デジタル庁やこども庁の新設には飛びつきながら、「防災省」構想を歯牙にもかけない総理大臣・菅義偉にも現れている。
 東京都と大阪府で五月二十四日に始まった防衛省・自衛隊による新型コロナウイルスの感染拡大防止策としての大規模ワクチン接種について、自由民主党安全保障調査会長を務める元防衛大臣・小野寺五典は、十日の同調査会・国防部会の会合で懸念を示していた。
「自衛隊の医官、看護官は約一千人ずつ。コロナ患者対応で自衛隊の医療部門にも負担がかかる中、大阪と東京で一日一万人を目標に接種を担うという。安全保障環境は厳しい。(大規模接種を担うことが)自衛隊の『本来任務』に影響を及ぼすことはないのか」
 自衛隊の本来任務は、「主たる任務」である防衛出動と、周辺有事への対応などを含む「従たる任務」から成る。ワク・・・