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連載

《世界のキーパーソン》ランドール・D・スミス(ヘッジファンド経営者)

米国「名門紙」を買い漁るハゲタカ

2021年6月号

 真山仁の小説『ハゲタカ』がNHKでテレビドラマ化されたのは、二〇〇七年のこと。日本では少々手垢のついた「ハゲタカ」の呼称を、ずっと保持しているのが今回紹介するスミスである。
 五月には、「シカゴ・トリビューン」紙などを所有する「トリビューン・パブリッシング」社が、スミスのヘッジファンド「オールデン・グローバル・キャピタル」に買収されることが決まった。全米のメディアの見出しはそろって「ハゲタカ、トリビューンを買う」であった。
 スミスの悪名を決定づけたのは、コロラド州の「デンバー・ポスト」紙買収である。一一年に、同紙の親会社の買収で経営権を握ると、類を見ない勢いでリストラと経費削減を始めた。二百五十人いた編集スタッフが数年で七十人にまで削られた。あまりの人員削減ぶりに、同紙論説委員会は、オーナーである「オールデン」を厳しく糾弾する社説を掲載した。社説は、自社オーナーを「ハゲタカ」と呼び、「過剰なリストラがジャーナリズムをつぶす」と警告した。
 スミスはスタッフの反乱を歯牙にもかけず、さらに経費削減を断行。市中心部にあった本社ビルを売り払い、郊外に編集部を移・・・