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経済

「人権リスク」が日本企業の急所に

佐藤安信(東京大学教授)

2021年5月号

 ―企業の人権侵害への関与に厳しい目が向けられています。

 佐藤 ミャンマーの軍政による横暴や、中国のウイグル問題が注目され、その地での日本企業の経済活動などが問題視される事態になっている。これまで、日本企業はあまり意識してこなかったが、今後は企業行動をする上で「人権」というものを常に念頭に置く必要が出てくる。ESG投資などが持てはやされているが、望む望まないにかかわらず、そうしたフィルターに晒される時代になっている。

 ―海外の事例だけでなく、国内にも問題はありますか。

 佐藤 外国人技能実習制度は深刻だ。外国人に技能を授けるという美名とは裏腹に、送り出し国で借金を背負わされて事実上の「強制労働」が行われている実態が改善されていない。昨年、米国務省は年次の「人身取引報告書」で日本を格下げしており、厳しい目が向けられている。また、受け入れ後にも、劣悪な労働環境で働かせる悪質な業者が後を絶たない。その上、コロナ禍であっさりと雇い止めにするなど、外国人労働者・・・