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ロシア軍が「黒海封鎖」の暴挙へ

米政権が抱える「西の軍事危機」

2021年5月号

 ロシア軍が四月、ウクライナとの国境地帯に十五万人もの兵員を集結させた。二〇一四年のクリミア半島併合と東部ウクライナ分離の時を上回る規模で、ウクライナ政府と、ジョー・バイデン米大統領に対する明白な挑戦だ。
 ロシア海軍はまた、カスピ海に展開中の艦船十五隻を、ソ連時代に造られた「ボルガ・ドン運河」を使って黒海に移動させた。
 黒海艦隊を大幅に増強して、ウクライナ周辺海域はもとより、広範な海域にわたって黒海を封鎖しようという試みだ。
 ウラジーミル・プーチン大統領は、新型コロナウイルス感染対策から、「五月一日までに撤収」を命じたが、米国は肝を冷やした。
 ロシア側から最前線に入った米国人記者は、「高速道路を何キロにもわたって、ロシアの戦闘車両が整然とウクライナ国境に向かう光景は空恐ろしい。我々は追い越し車線を何の妨害もなく走行できた。本当にウクライナを攻めるつもりなら、とてもこんな公然とは動かないだろう」と語る。
 ロシア当局は、反体制派アレクセイ・ナワリヌイ氏(収監中)支持者のデモ弾圧では、外国の取材班にも威嚇や暴力を厭わない。ところが、・・・