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経済

《クローズ・アップ》磯崎 功典(キリンHD社長)

ミャンマー軍の「人権破壊」を側面支援

2021年5月号

 キリンホールディングス(HD)が投資するビール会社、ミャンマー・ブルワリーが、経営上の最大のリスクとなってきた。現地で最大のビール会社である同社の四九%の株を持つミャンマー・エコノミック・ホールディングス(MEHL)は国軍の直系企業。ビールからあがる利益が、軍の資金源となっているのが確実だからだ。
 国軍は二月に、アウンサンスーチー氏が率いる民主政権をクーデターで打倒して、権力を掌握。その後はクーデターに反対する市民の抗議活動を武力で制圧して、四月下旬までに八百人前後の市民が虐殺された。
 MEHLは国軍の退役含め軍人の福利厚生や軍の装備、施設建設のための資金を提供しているといわれる。そのため、キリンの合弁会社がつくるビールは世界で「ブラッド・ビア(血のビール)」と呼ばれ始めている。
 誰がみても即刻、ミャンマーのビール事業から撤退する必要があるが、キリンHDを率いる磯崎功典社長の歯切れはよくない。
 二月十五日の決算会見では「現地のパートナーシップ(MEHL)のもとではビール事業を継続できなくなった」と国軍直系企業との縁切り宣言をした。しかし・・・