三万人のための情報誌 選択出版

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連載

マスコミ 業界 ばなし

2021年4月号

 日本テレビが情報番組で三月に放送したアイヌ民族への差別問題が深刻化している。アイヌ民族のドキュメンタリーの紹介の際、お笑い芸人が「あ、犬」と茶化したのが事の発端。この番組には、複数の報道局経験のプロデューサーがいたほか、読売新聞の橋本五郎氏なども出演しているだけに関係者のショックは大きい。番組で紹介したドキュメンタリーは、アイヌ民族の萱野りえ氏が、米国の先住民を訪ねるシリアスな内容。日テレが新たな収益源と力を入れる配信子会社Huluの番組だったが、とんだミソが付いた格好だ。
 深刻なのは、日テレが現在、日本民間放送連盟の会長社であること。あらゆる差別を放送から撲滅する旗振り役の大失態に、「テレビ報道への介入のチャンスをうかがう政治や行政に口実を与えた」(メディア関係者)との危惧が広がる。今回の問題ではすでに、加藤勝信官房長官が政府として、日テレに厳重抗議したと明らかにしている。また、上位に立つ読売新聞がこれを奇貨として日テレへの介入を強化する可能性も懸念される。現在の社長は生え抜きの小杉善信氏。「テレビ屋に会社の監督は任せられない」と、一層の“読売支配&rdqu・・・