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WORLD

紛争「多発」のバイデン時代

国際情勢の安定は遥か遠く

2021年3月号特別リポート

 米国のジョー・バイデン大統領の安全保障・外交構想が、就任早々から行き詰まっている。
 民主党政権は、ドナルド・トランプ前大統領の「米国第一」政策を改め、同盟国網を再構築して、中国とロシアに対抗するのが基本方針だ。ところが、四年間の孤立主義と、米国の地位の相対的低下によって、同盟諸国の対応はきわめて緩慢、冷淡である。
 米中露の力が及ばない権力の空白地帯では、さまざまな規模の紛争が激化している。米政府が目指す「平常への回帰」は、超大国がにらみを利かせる「安定」にはつながらず、むしろ紛争の同時多発に陥る危険をはらんでいる。

対中露「共同戦線」構想が座礁

 新型コロナウイルスの時代は、国際政治が面白い。各国政府間のオンライン会議があたりまえになって、以前は不可能だったことが簡単に実現できるようになった。
 日本時間の二月十九日から二十日にかけては、英国主催の主要七カ国(G7)首脳会議と、ドイツを会場とする「ミュンヘン安全保障会議」が連続で開かれた。例年なら物理的にあり得ない、注目イベ・・・