女性社外取締役「争奪戦」の珍妙
真の「多様性」とは程遠い現実
2021年3月号
大手企業の株主総会を控えた二~四月、連日のように役員人事が新聞紙面を賑わせる。その中でこの数年、注目されているのは新任の女性社外取締役だ。メディア露出の多い著名人が起用されれば、テレビのワイドショーでも取り上げられる。上場企業で女性の社外取締役を選任している企業はまだ四三・五%(二〇二〇年)で、少ないのは事実だが、「女性の適格者がなかなかいない」という事情もある。結果的に「ボード(取締役会)のお飾り」のような女性社外取締役が乱造され、実力ある女性取締役が霞んでしまう。多様性の本質を理解せず、員数合わせで見栄えのする女性を形ばかり登用する風潮は、日本社会の根強い性差別の裏返しでもある。
「女優の酒井美紀さんが不二家の社外取締役候補に」。二月初め、赤いリボンを結んだペコちゃんの着ぐるみと並んだ青いエプロン姿の酒井氏の写真がメディアの経済欄を飾った。場違いな扱いには女性社外取締役を興味本位でしか見られないメディアの時代錯誤が映し出されている。
元アナの女性が引っ張りダコ
社外取締役は一九年・・・