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中国の南シナ海「行政統治」が本格化

「島嶼強奪」尖閣への懸念

2021年3月号

 東アジアの海洋で領有権主張を強める中国が、南シナ海の係争地すべてを「海南省三沙市」として、本格的な行政統治に乗り出した。常設仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)の二〇一六年の裁定を歯牙にもかけず、他国が実効支配している地点まで「中国領」と言い張る傍若無人ぶりだ。沖縄県石垣市の尖閣諸島にも、同様の暴挙に出ることも懸念される。

二百八十もの島々が「三沙市」に

 今年になって米政府が入手した「三沙市公文書」には、西沙諸島(パラセル諸島)のウッディー島(中国名=永興島)で、住宅建設事業の入札が昨年から今年にかけて行われ、中国の二社が落札したことが記されていた。三沙市のウェブサイトによると、今年一月下旬で同島には約一千八百人が住んでいる。入札によると、新たに二百十四戸が建設予定で、約四百人の新住民を迎え入れることになる。
 このウッディー島の住民が目下、三沙市の人口の大半を占めている。お伽噺のようなミニ行政区の三沙市は、一二年七月、国務院によって「地級市」と認められた。省クラスと県クラスの間に位置する堂々たる行政・・・