コロナ政局の「ポスト菅」候補一覧に、岸田文雄前自民党政調会長の名前はまだ残っているだろうか。もう半ば消えかかっている。それどころか、今年九月に予定される自民党総裁選に、岸田氏は立候補できるかどうか。
　昨年九月の自民党総裁選。菅義偉官房長官（当時）が得票率七割（三百七十七票）で圧勝した時、岸田氏は石破茂元幹事長（六十八票）を上回る八十九票を得た瞬間、思わずほおを緩ませた。三位なら次の機会も消えていたから安堵したのだとしても、結果は惨敗である。勝負に臨む岸田氏の甘さが笑みに表れた。それでも本人はどこまでも能天気、もとい大真面目である。三週間後、派閥のパーティーで力強く宣言した。
「より大きな政治の塊が不可欠だ。強力な塊、宏池会（岸田派）の大きな塊を実現できるよう私自身先頭に立って汗をかきたい」
　誰が聞いても岸田派（四十七人）と、過去に宏池会から分裂した麻生派（五十六人）、谷垣グループ（約二十人）の再結束をめざす「大宏池会」の呼びかけである。露わになった基礎票の不足を積み増そうという発想だが、政治は固より単純な算術ではない。もっと重要なのは時機と勢い、人を・・・