三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

中央アジアで高まる「反中国」

一帯一路の「暗黒面」が露見

2021年2月号

 中国が貪欲に「領土」を主張するのは、近隣諸国共通の悩みだが、国土の半分を「歴史的な中国領」と主張されたら、黙ってはいられない。中央アジアのタジキスタン政府は最近、中国メディアで、パミール高原が「中国固有の領土」と論じられていることに激怒し、中国政府に直接抗議した。
 このほかにも、「キルギスは元来、中国の歴代王朝の一部だった」といった議論が中国内で横行している。中央アジア五カ国は、中国にとって「一帯一路」構想の出発点となる重要な国々だ。ところが、中国側からは官民そろって見下した態度を取られ、まるで属国扱いだ。各国では急速に反中感情が高まっている。

「パミール高原を中国に返せ」

 パミール高原は、「世界の屋根」と呼ばれる。ユーラシア大陸の中央に位置し、天山山脈、崑崙山脈、ヒマラヤ山脈、ヒンドゥークシュ山脈に連なる。七世紀の唐代の僧侶、玄奘三蔵もこの高原を旅して、インドに渡った。
 今回問題となったのは、タジキスタン領内のパミール高原だ。昨年七月、中国の歴史家が「パミール高原の歴史」を概説す・・・