三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

コロナで「消滅」イタリアの村々

医療脆弱な観光立国の悲劇

2021年1月号

 二〇二〇年春に新型コロナウイルス感染の「惨劇舞台」となったイタリアが、またも秋~冬の第二波で大きな被害を受けている。イタリアは日本に次いで、世界第二の高齢者比率が高い国で、脆弱な国民が多いことが原因だ。連日数百人の死者を記録し、十二月には英国を抜いて「欧州最悪の死者数」の国になってしまった。
 春の感染時に浮き彫りになった医療従事者不足は、短期間で解消することはできず、感染被害は特に農村部で深刻である。イタリア観光の魅力である「小さな村」では、村全体が消滅の危機に瀕するところが続出している。

「第一波の教訓」から学べない

 イタリアの新型コロナ感染は昨春、世界で最も悲惨な光景を生んでしまった。病院の廊下の床にまであふれた重症患者、誰から見捨てるべきか究極の判断を迫られた医師たち。ミラノ大聖堂前の広場やベネチアのサンマルコ広場といった世界遺産の大観光地は、過去に類例がないほど人跡が絶えて、「ゴーストタウン」化した。
 ジュゼッペ・コンテ首相は、第一波では欧州最長の十週間もの「ロックダウン(・・・