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連載

《世界のキーパーソン》アブリル・ヘインズ(次期国家情報長官候補)

柔道「茶帯」のサイバー戦のプロ

2020年12月号

 ジョー・バイデン次期大統領が、新しい安全保障チームをお披露目した際、ヘインズを「この人はプロだよ」と紹介した。上院で承認されれば、長官職が二〇〇四年に創設されて以来、初の女性長官誕生になる。〇一年の米同時多発テロ事件後、「各種の情報機関を束ねる人が必要だ」との声に押されて、新設された。中央情報局(CIA)を筆頭に十七もある米国の情報機関の頂点に立つ。
 そんな要職なのに、海外であまり知られていないのは、ドナルド・トランプ大統領が、CIAを毛嫌いした上に、情報長官ポストには、自分に最も忠実な人間ばかりを起用したためだ。
「トランプ自身がロシアと怪しい関係にあったので、CIAに目をつけられていた。大統領就任後は、CIAが自分に陰謀を企んでいると信じ込んでいた」と在ワシントン政治記者は言う。
 過去一年あまりは特にひどく、トランプ時代の長官や長官代行は、愚にもつかない大統領の追従しか言わないので、記事にならなかった。バイデンがわざわざ「プロ」と言ったのには、完全に政治の道具化した情報機関に、活を入れ直すという意図がこもった。
 五十一歳のヘインズは、・・・