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連載

日本の科学アラカルト 124

体から出る「ガス」で検査 新たな病気診断方法の研究

2020年12月号

「臭いものに蓋をする」「我が身の臭さ我知らず」。においに関することわざは多くある。視覚、聴覚、触角、味覚、嗅覚という五感の中で、嗅覚だけは脳での情報処理経路が異なるといわれ、記憶とも結びつきやすいことが知られている。
 また古くから、口臭に口腔や呼吸器以外の内臓疾患が現れるといわれている。呼気のにおいだけでなく含まれる成分や、口以外から出るガスなどを解析することで病気を発見しようという研究が進められている。
 今年十月、東北大学と島津製作所は、自然な呼吸で吐く息をサンプル(試料)とする「呼気オミックス」による新型コロナウイルスの検査法の開発に成功したと発表している。
 オミックスとは人体からの代謝物やタンパク質などの分子を網羅的に解析する技術のことで、血液や唾液などあらゆるサンプル形態がある。もっとも広く知られている新型コロナの感染検査方法は、PCR検査だが、鼻や喉から試料を採取するために綿棒を差し込む必要がある。
 東北大で開発された高性能エアロゾル回収装置を用いると、五分間の呼吸で「呼気凝縮液」と呼ばれるサンプルを約一ミリリットル採取すること・・・