米株式市場で新規上場「急増」の危うさ
実体経済と逆行「株高」のカラクリ
2020年12月号
新型コロナウイルスのパンデミックで米国の実体経済が危機的状況にもかかわらず、ニューヨーク株式市場では新規株式公開(IPO)が盛況だ。その活況を呈するIPOを支えているのが、SPAC(Special Purpose Acquisition Company:特別目的買収会社)経由の上場である。「ブランクチェック(白地小切手)会社」とも呼ばれるSPACは、立ち上げた当初は事業実体がなく、上場して投資家から資金を集めた後に、さらに追加で資金を調達して、自らより大きく有望な非公開企業をターゲットに買収、合併を行う。小が大を呑むのである。一方、買収される側の多くは起業間もないIT企業で、SPACを経由して通常のIPOよりもラクな上場を果たすことができる。
このSPAC経由の上場件数は、二〇一六年は十三件、一七年は三十四件、一八年は四十六件、一九年は五十九件と微増傾向だったが、二〇年は十一月下旬までで百九十三件に達し、全IPO件数である三百六十五件のうち、五三%を占めている。資金調達額は六百七十四億ドル(約七兆円)と一九年の百三十六億ドルから急増しており、全資金調達額の四七%を占めてい・・・
このSPAC経由の上場件数は、二〇一六年は十三件、一七年は三十四件、一八年は四十六件、一九年は五十九件と微増傾向だったが、二〇年は十一月下旬までで百九十三件に達し、全IPO件数である三百六十五件のうち、五三%を占めている。資金調達額は六百七十四億ドル(約七兆円)と一九年の百三十六億ドルから急増しており、全資金調達額の四七%を占めてい・・・