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政治

菅政権で進む「公安国家」化

首相の「右腕」杉田官房副長官の本性

2020年12月号

 田中角栄元首相のロッキード裁判「丸紅ルート」最終弁論が行われていた一九八三年五月十二日、後藤田正晴官房長官(中曽根内閣)は、「政府首脳」として行った記者との懇談で、弁論の感想を問われ、「検察側の主張はデタラメで間違いだ」と放言した。
 オフレコが慣行とはいえ、朝日など一部新聞は、司法の独立を尊重すべき行政府首脳の重大発言として夕刊一面トップで報道。野党が、政府が田中側の主張を全面的に擁護したのは「政治権力の露骨な司法介入だ」と一斉に反発し、国会で騒ぎになった。
 杉田和博官房副長官は当時、官房長官秘書官。警察官僚の大先輩で「カミソリ」と恐れられた後藤田に絶対忠誠を誓っていたが、自分の不始末と思ったのか、先駆けて記事にした記者らを旧首相官邸の暗がりへ一人ずつ呼び出した。「何したか分かってんのか。オフレコ破りだ。番記者は長官を守るのが役目だろ。お前は裏切った。ただじゃ済まされんぞ」。言葉遣いも荒い露骨な脅迫だった。
 結局、ほぼ全紙が記事にし、収拾を迫られた後藤田が「政府首脳発言は不適切」と事実上認めて発言を取り消したが、政治記者たちは貴重な教訓を得た。日頃・・・