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WORLD

RCEP「紅い経済圏」への危惧

恩恵乏しき日本

2020年12月号

 日中韓と東南アジア諸国連合(ASEAN)、豪州、ニュージーランドの十五カ国が東アジア地域包括的経済連携(RCEP)への参加で合意した。日本メディアは「世界人口の三〇%を占める巨大経済圏」と騒ぎたてるものの、日本にとってのメリットは薄い。日本が狙ったアジアの広域経済連携による中国の影響力希薄化は、中国がRCEP合意直後に環太平洋経済連携協定(TPP11)への参加表明という奇策で、完全に打ち消された。実利なき多国間貿易協定に飛びついた日本の失敗の代償は大きい。
「なんだ!」。十一月二十日、中国の習近平国家主席がオンラインで開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)で、「TPP11への参加を積極的に考える」と表明したことが伝わると、霞が関の経済産業省本館十五階の通商政策局の一角では、驚きとも悲鳴ともつかない声が響いたという。二〇一八年三月のTPP11に続き、今回、RCEPの合意にこぎつけ、「米国、中国との関係をにらみながら日本の立ち位置を確保した」つもりだった経産省が、完全に中国に出し抜かれたからだ。

「おままごとの自由化、市場開放」・・・