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荒れる「紅海」中東の過熱地帯に

米中露も加わって「利権争奪戦」

2020年12月号

 アフリカ大陸とアラビア半島にはさまれた紅海が、中東の抗争地域として、にわかに注目を集めている。沿岸国の一つ、スーダンが十月に、やはり沿岸国のイスラエルとの間で、国交正常化を決めるなど、全沿岸国および周辺国、米国、中国、ロシアなどを巻き込んだ外交戦が急展開している。
 紅海の南端にあるジブチには、日本の自衛隊拠点や中国の人民解放軍基地、米軍の「アフリカの角・共同統合任務部隊」がある。フランス、イタリア、ドイツ、スペインも拠点を置く。十一月にはロシアが、スーダンに大規模な海軍施設を建設すると発表した。
 スエズ運河を北端とする紅海は、世界の海上交通の約一〇%を占める大動脈だ。各国による沿岸利権と軍事拠点の奪い合いは、過熱する一方である。
 紅海と言えば、預言者モーゼが海を割って、徒歩で渡った「出エジプト記(旧約聖書)」で有名だ。映画「十戒」、「エクソダス・神と王」の映像にも描かれた。近年は「紅海渡歩」について、「本当に起きた現象」との説が相次ぎ、世界の科学者の間で議論が盛んだ。
 実際の姿は、ずっと生々しく、かつ陰惨である。
 沿岸八カ国・・・