日本の科学研究が「衰弱死」する
村上 陽一郎(科学史家)
2020年11月号
―日本学術会議を巡る議論が起きていますが、この国のアカデミーの世界が今抱える課題はなんでしょう。
村上 今回の「学問の自由」論については肯定しない。一方で学術会議はこれまでに発信すべきことがもっとあったと思う。特に科学・技術の分野を見ると、地盤沈下が始まっており研究する力が衰えている。原因は複合的だが、明白なものも多く、法的に権限のある学術会議は声を上げるべきだ。これまでも提言などを行っているだろうが、状況は悪化している。
―足元では大学院の博士課程で学ぶ学生の数が減っています。
村上 一九八〇年代から当時の文部省は博士課程への進学者を増やそうとしており、その政策決定プロセスの一端を直接見てきた。しかし、当時から今まで一貫しているのは「出口戦略」がないということ。博士を量産しても、その受け皿がなければならないのに、当時の文部省の担当者は「今から欧米のポスドクの現状を調査するので大丈夫です」と呑気に話していた。結局受け皿は見つからないまま博士量産が見切り発・・・
村上 今回の「学問の自由」論については肯定しない。一方で学術会議はこれまでに発信すべきことがもっとあったと思う。特に科学・技術の分野を見ると、地盤沈下が始まっており研究する力が衰えている。原因は複合的だが、明白なものも多く、法的に権限のある学術会議は声を上げるべきだ。これまでも提言などを行っているだろうが、状況は悪化している。
―足元では大学院の博士課程で学ぶ学生の数が減っています。
村上 一九八〇年代から当時の文部省は博士課程への進学者を増やそうとしており、その政策決定プロセスの一端を直接見てきた。しかし、当時から今まで一貫しているのは「出口戦略」がないということ。博士を量産しても、その受け皿がなければならないのに、当時の文部省の担当者は「今から欧米のポスドクの現状を調査するので大丈夫です」と呑気に話していた。結局受け皿は見つからないまま博士量産が見切り発・・・