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社会・文化

ローマ字略語「氾濫」への辟易

日本人の「思考力退化」の表れ

2020年11月号

 CX、DX、EX、FXと並べて意味するものを瞬間的に想起できるのは、世の中の動きに相当、敏感な人だろう。こうしたローマ字略語が過去十年間で日本語の中に急増している。デジタル化が進み、ICT(情報通信技術)用語が増加、ビジネスや日常生活にも浸透してきたことがある。カタカナ表記では長すぎて不便だったり、日本語に翻訳し切れなかったりする用語があるのは確かだが、実は多くは簡便な漢字表記も可能。ローマ字略語にするのは概念への理解不足や相手をごまかそうというケースが多い。結果として、物事を深く思考しない社会人が大量発生しつつある。
 冒頭の四つの略語は、CXは「カスタマー・エクスペリエンス」、DXは「デジタル・トランスフォーメーション」、EXは「エクスプレス」、FXは「フォーリン・エクスチェンジ」の略である。確かにカタカナ表記にすれば、長くて不便だが、CXは「顧客体験」で十分表現できる。EXは「快速」や「急行」、FXは「外国為替」という一世紀前からの定訳がある。いずれも日本語にして文字数が大幅に増えるわけではない。
 問題はDXである。直訳の「数字変革」では意味を成さないが、・・・