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WORLD

中印が譲れぬヒマラヤ「水戦争」

「三十億人」の存亡をかけた攻防

2020年10月号

 世界の最高峰が並ぶヒマラヤ山脈を舞台に、中国とインドの「水戦争」が激化している。インダス、ガンジスの両大河を筆頭に、中印両国だけでなく、パキスタンや東南アジア諸国の水資源の源流がこの地域に集中しているためだ。三十億人以上の暮らしが、ヒマラヤの係争地にかかっている。
 中国はユーラシア大陸の主要水源を押さえており、インドを断固封じる構えだ。ヒマラヤ山脈は地球温暖化により急速に溶解が進んでいる。下流諸国には予測不可能な激変が起こると見られている。中印の世論は「思い知らせてやれ」といった強硬論が強く、「世界の屋根」での緊張は高まる一途だ。

川を堰き止める中国の荒療治

 今年六月十五日夜、ガルワン渓谷で起きた中印両国軍の衝突は、長く語り継がれるに違いない。
 中印間には一九九六年の合意により、「銃不使用」の規則がある。その分、衝突は危険なこん棒を使った、「陰惨な中世の白兵戦」(インド紙)になった。
 中国側はクギを打ち付けたこん棒、有刺鉄線を巻き付けた石といった武器で、インド側に襲い掛・・・