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社会・文化

塗り替わる「世界ワイン地図」

「気候変動」でブドウ畑が様変わり

2020年10月号

 地球温暖化を含む気候変動が世界のワイン産地に、深刻な影響を及ぼし始めている。ブドウの熟度の上昇は冷涼な産地にはプラスに働く一方で、味わいの変化や品種の変更、災害の多発など、ネガティブな変化も目立っている。
 二〇二〇年のフランスは、全土で歴史的に早い収獲となった。ブルゴーニュの解禁日は八月十二日、シャンパーニュは十七日。過去五世紀で最も早い収獲の一つだった。春の暖かさで開花が早く、八月は乾燥して暑かった。一八年以来、同様の気候が続いている。冷涼なブルゴーニュ地方にはプラスだが、繊細で優雅な持ち味が、濃厚なカリフォルニアのような風味になってきたのを警戒する造り手も多い。
 オーストラリアからブルゴーニュに移住してきたマーク・ハイスマは、暑い土地でワインを造った経験を生かして、高いアルコール度や抽出の強さを避けている。
「ジャミィな赤や、熟しすぎた白はうちのセラーにはない。今年は早めに摘んで酸を保った。純粋さとフレッシュ感を保つため、ブドウの房を葉で覆って、熱い太陽が粒に直接当たらないように工夫した。将来の栽培にはより創意工夫が必要になる」
 冷涼・・・