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社会・文化

北関東「家畜泥棒」の深刻事情

「社会の闇」に消える農産物

2020年10月号

 収穫の秋が深まり、各地で農産物が盗まれる被害が相次いでいる。高速道路が近い産地で、軽量・高額な果実が狙われることが多い。しかし、この夏に北関東で連続した豚の大量盗難はこれまでとはまったく異質だ。背景には外国人労働者の安易な受け入れと養豚業の産業構造変化がある。
 近年の農産物窃盗は大胆不敵な手口で、自家消費ではなく明らかに転売目的だ。六月ごろはサクランボが狙われる。夏はシャインマスカットだ。八月末に群馬県高崎市で約百房、隣接する同県榛東村でも約五十房が盗まれた。ブドウが終わればナシ。八月二十五日から九月九日にかけて、埼玉県神川町の農家四軒で豊水や新高など計約三・三トン、同県上里町で豊水など約一トンが盗まれた。
 これらの高級果実は、軽四輪で即売されたり、インターネットに出品されたりする。「すそもの」と呼ばれる規格外農産物を扱うディスカウンターが、出所を問わず安値で買い入れるケースもある。

タブー視される重要産業

 一方、六月から九月にかけて北関東を中心に相次いだ家畜盗難は、規模も手口も異・・・