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連載

皇室の風 146

ロナルドの『幻滅』
岩井 克己

2020年10月号

 敗戦直後から日本を見続けた「親日外国人」二人が相次いで亡くなって、間もなく二年になる。
 英国人社会学者ロナルド・ドーア(平成三十年十一月死去、享年九十三)と、米国人日本文学者ドナルド・キーン(日本国籍取得後、同三十一年二月死去、享年九十六)だ。
 ロナルド・ドーアには会って話を聞いたことがある。日本人と戦後日本の経済社会、政治の「劣化の兆し」を英国風の皮肉とユーモアないまぜで嘆いた。
「でも、ドナルドやエズラ・ボーゲルの本ばかり売れて、私の本は売れないんだよね」
 自虐的な苦笑の裏に、戦後日本の経済社会が大好きで、それが破壊されつつあることへのいら立ちが垣間見えた。人懐こい笑顔が懐かしい。
 それだけに、最後の著書『幻滅―外国人社会学者が見た戦後日本70年』(二〇一四年刊)のタイトルには軽い衝撃を受けたものだ。
 人類史的危機にあって、社会経済構造が土台から問われているさなか、永田町で語られるのはカジノつき統合型リゾート、「Go Toトラベル」キャンペーン、携帯料金値下げ、中小企業と地銀の淘汰など、いかにも即物的な惹き文句・・・