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社会・文化

日本クラシック界「川崎の奇跡」

コロナ禍で無事挙行の「夏の音楽祭」

2020年9月号

 七月二十三日から八月十日まで、ミューザ川崎シンフォニーホールで「フェスタサマーミューザKA
WASAKI」が開催された。首都圏プロオーケストラ十団体と地元川崎の昭和音楽大学オーケストラが参加、十九日間に十七公演が行われ、全公演がほぼ満席の観客を集め、有料のライヴ配信チケットも売り上げ好調だった。川崎市文化財団グループが催すこの文化イベント、参加オーケストラの数に限れば、老舗ザルツブルク音楽祭をも凌ぐ二〇二〇年夏に世界で開催された最大規模の音楽祭である。
 世界を襲った新型コロナウイルスの災禍で、どの都市でも不特定多数を集めるイベントは開催不可能となる。コンサートホールやオペラハウスも例外ではない。毎年二月の春節過ぎに始まる香港芸術節の中止を皮切りに、欧州各地での四月の復活祭や五月末からの聖霊降臨祭の大規模音楽祭が次々と中止。日本でもクラシック音楽界は緊急事態宣言前から大規模公演を自粛。有楽町のラ・フォル・ジュルネを筆頭に、金沢や大津などゴールデンウィークに開催される大型音楽祭は軒並み中止となった。
 夏に向けてもコロナ禍が収まる気配はない。作曲家ヴァーグ・・・

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