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経済

《クローズ・アップ》池田 潤一郎(商船三井社長)

世界的大事故で「無責任」の極み

2020年9月号

 新型コロナ感染で物流が激減するなか、商船三井が用船していた大型貨物船が七月二十五日、モーリシャス島沖で座礁、重油流出事故を起こした。社長就任から六年目、締めくくりの年の池田潤一郎(六十四歳)社長にとっては虚を突かれた無念の事故となった。
 事故を起こした「WAKASHIO」は岡山県に本社を置く長鋪汽船の所有で、船長以下の乗組員もすべて長鋪汽船が手配しており、商船三井には直接的な責任はない。むしろチャーター船の事故で「荷主に迷惑をかけるという点では被害者」と同社関係者は嘆く。事故直後の記者会見でも詳細説明はすべて長鋪汽船社長が対応し、商船三井側は担当副社長のみの出席で、池田社長は姿すら見せなかった。
 だが、表面的な責任とは別に船主、運航者、用船者、荷主、保険会社が複雑に入り乱れ、責任を切り刻んで、あえて不透明にしている海運業界の構造にこそ、こうした「考えられない単純ミス」が起きる背景、要因がある。
 事故の原因は本来、近寄る必要がなかったモーリシャス島に、インターネット接続のための電波を求め、近寄りすぎたこととされる。タンカー、液化天然ガス(LNG)輸送・・・