タイの首都バンコクにデモが戻ってきた。地方都市でのデモを加えると、七月半ばから、一カ月以上、続いている。しかも今回は、「過去に前例がないもの」（タイ紙記者）だ。歴史的に不可侵扱いだった、タイ国王・王室について、「憲法の精神に沿って改革する」ことを求めているからだ。
　主体は学生だが、一般市民や民主活動家の姿も見られる。三十六歳のアーノン・ナンパは弁護士で、人権活動家。学生たちにとっては民主化運動の大先輩にあたる。
　今回のデモでは、「ハリー・ポッター」のキャラクターを使ってタイ政情を皮肉るなど、長年当局とのせめぎあいで培った様々な手法を見せ、運動の指導者になった。
　学生たちは八月十日、タイ紙記者が「ルビコン川を渡った」と表現する、決定的な一歩を踏み出した。タマサート大学構内での集会で、「国王は政治の上に君臨するのではない」とし、憲法の枠内での王室改革を求めた。現場にいた記者が、「約三千人の参加者には明らかな動揺、戸惑いがあった」と言うほど、タイでは前代未聞の大胆な要求だった。
　学生たちは、動議を採択。その後も連日、抗議活動を続けた。ナンパら・・・