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社会・文化

「農協改革」は元の木阿弥に

JA全中は「守旧派路線」へ回帰

2020年9月号

 思いがけない疫病の蔓延でグローバル化に対する懸念が高まり、農業分野の構造改革は失速中だ。農産物の関税撤廃を原則とする環太平洋経済連携協定(TPP)や全国農業協同組合中央会(JA全中)の組織見直しなど、農協改革をめぐって熱い議論が戦わされた数年前と比べると様変わりだ。
 転換点は昨年九月の内閣改造にあった。自民党幹事長を外されるのを警戒した二階俊博幹事長と、後継首班への意欲を内に秘めた菅義偉官房長官が急接近した。他の政策はともかくとして、少なくとも農業政策に関しては理念なき野合だ。農業分野の改革のアクセルを踏むのが菅官房長官で、二階幹事長がブレーキ役だったからだ。

あの「JA叩き」は壮大な茶番劇

 菅官房長官は、経済産業省出身の官邸官僚や農林水産省の改革派官僚の後ろ盾となり、特に二〇一五年から一六年にかけて小泉進次郎自民党農林部会長(当時)を看板役に仕立てて農業改革を推進した。小泉部会長自ら、自民党内の農林水産業骨太方針策定プロジェクトチーム(通称・小泉PT)の委員長となり、肥料や農薬など生産資材価・・・