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経済

《地方金融の研究》愛知銀行

女子行員「現金窃盗事件」の余波

2020年9月号

「犯行の手口といい、直接の逮捕容疑といい前代未聞の事件ではないか」。コンプライアンス部門に籍を置くメガバンク関係者の一人はこう呆れ返る。
 勤務先から現金五百万円を盗んだとして愛知銀行の六十歳女性行員(=当時)が愛知県警に窃盗容疑で逮捕されたのは、新型コロナが再び猛威を振るう兆しを見せはじめた今年七月一日のことだった。犯行の舞台となったのは蟹江支店(愛知県蟹江町)。近鉄名古屋線の近鉄蟹江駅から三重県桑名市方面に向かって一・三キロメートルほど進んだところにある比較的こぢんまりした支店だ。
 十年前からこの支店に勤務する当該行員の出張に当たって、業務を引き継いだ別の行員が同日、金庫内で一万円札を一千枚重ねた札束、通称「大束」の一番下の紙幣が五千円札になっているのに気づき、庫内の現金不足が判明。被害届が提出されたのを受けて捜査が進められた結果、支店内のロッカーから現金五百万円がみつかるなど、この女性行員の犯行があぶり出されたのだ。現金は二日前の勤務時間中に盗み取られたものだったという。
 一般的に“銀行員の犯罪”と言えば顧客の財産を騙し取・・・