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経済

武田薬品の経営に現れた「末期症状」

「稼げる薬」が作れない名門の哀れ

2020年9月号

 武田薬品工業の評判が芳しくない。米食品医薬品局(FDA)が昨年十一月に実施した査察で、山口県光市の工場の品質管理体制の不備が指摘されて以降、前立腺がん・乳がん治療薬の「リュープリンSR」の出荷が停止。二〇一九年九月には、米国で副甲状腺ホルモン製剤「ナトパラ」にゴム粒子が混入していることが発覚し、自主回収した。この状況について、武田の社員は「進駐軍にマネジメントを委ねて以来、社内は緩みきっている。本来、手綱を締めるべき管理職の多くが退職してしまったためだ」と言う。
「進駐軍」とは、一四年六月に武田の社長に就任したフランス人クリストフ・ウェバーと外国人幹部のことだ。現在、武田にはウェバーを含めて五人の社内取締役がいるが、三人は外国人だ。今やグローバル企業の武田は、世界に六十の拠点を有し、五万人の社員の九割は外国人だ。一七年七月には湘南研究所(現湘南ヘルスイノベーションパーク)を縮小し、研究体制の中心を米マサチューセッツ州に移した。一八年十二月には米ニューヨーク証券取引所に上場し、マサチューセッツ州ケンブリッジ市では三千人を雇用し、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学(MIT・・・