ポスト安倍候補の「側近」人物評
勇将不在の自民党は「弱卒」ばかり
2020年9月号
総理大臣・安倍晋三を輩出した成蹊大学の校名は、「史記」の「桃李もの言わざれども下自ずから蹊を成す」に由来する。そんな光景が政界から消えて、久しい。徳が自然と人を招き寄せる指導者がいなくなったからだ。安倍政権もまた、宰相の徳に側近が付き従うのではなく、側近がトップを振り回す政権だった。安倍の持病悪化で後継者の品定めが急がれる局面でもなお、「ポスト安倍」に徳で人を動かす人材は見当たらず、側近頼みの展開が強まっている。
八月十八日夜、世論調査では「次期宰相」の首位に立つ自民党元幹事長の石破茂が、同党国会対策委員長の森山裕と会食した。小派閥の近未来政治研究会(石原派)所属ながら森山は、内閣官房長官・菅義偉の信頼も厚く、野党人脈も太い。安倍が露骨に石破を嫌う中、菅がインターネット番組で石破を安倍後継の有力候補の一人と認める発言をした直後の会食は、様々な臆測を呼んだ。仕掛けたのは「政策オタク」の石破ではなく、会合に同席した水月会(石破派)会長代行の山本有二だった。
側近には三通りある。友情、尊敬、血縁などを通じ忠誠心の高い「忠臣型」、巡り合わせと惰性でやむなく・・・